今こそ知りたい「グランド・セフト・オート」の魅力 歴史から人気の理由までまるっと解説

2024年、最もゲーム好きの関心をつかんで離さないゲームシリーズといえば何でしょうか?

VTuberやストリーマーからも人気を集め、世界大会が活発に行われている「ストリートファイター」でしょうか? はたまた、実写ドラマが好評を博している「Fallout」? 7700億円(約50億ドル)という驚異の売り上げをたたき出している『原神』を挙げる人もいるでしょう。

魅力的な作品がひしめくゲーム業界において、今最も注目を集めているのが、今回紹介したい「Grand Theft Autoグランド・セフト・オート/通称・GTA)」シリーズです。

グランド・セフト・オートV(GTA5)』を使った配信企画「ストグラ(ストリートグラフィティ ロールプレイ)」は2023年に人気が爆発し、日本のゲーム配信シーンを席巻。2023年末には、開発中だとされていた『グランド・セフト・オートVI(GTA6)』が2025年にリリース予定と発表され、改めてシリーズへの注目が高まっています。

1998年に初代『グランド・セフト・オート』が発売されて以来、20年以上にわたって愛されてきた同シリーズ。一体どんな内容なのか、どう楽しまれてきたのか、筆者の実体験と共に紹介します。

友達のちょっとやんちゃなお兄ちゃんが持ってたな〜

「Grand Theft Auto(グランド・セフト・オート)」って何?

「GTA」とは、ロックスター・ゲームスが開発するゲームシリーズ。

タイトルにもなっている「Grand Theft」は、日本語にすると重窃盗(罪)という意味。つまり、「Grand Theft Auto」は車両窃盗、その中でも被害や規模の大きいものを指しています。

20年の歴史の中で様々な要素が追加されてきた「GTA」シリーズですが、名前の通り、その根幹には街を走っている車を自由に(盗んで)乗り回す楽しみがあります。

その特徴は、公式サイトに記載されている初代『GTA』の概要にも現れています。

何十種類ものマシンに乗って、アメリカで最も過酷な3つの街を駆け抜けろ!

一流の腕がなければ、最速のマシンは乗りこなせない。一流の頭がなければ近道が分からず、最もクールなマシンは手に入らない。そして誰よりも固い意志がなければ、世界を敵にまわしてプロの仕事をこなすことはできないだろう…

ロックスターゲームス公式サイトより)

初代『グランド・セフト・オート』のキービジュアル/画像は公式サイトから
初代『グランド・セフト・オート』のキービジュアル/画像は公式サイトから

ちなみに、ここで言われている3つの街とは、マイアミをモデルにした「バイスシティ」、ロサンゼルスをモデルにした「サンアンドレアス」、ニューヨークをモデルにした「リバティーシティ」のこと。

これらの街は、『GTA6』にいたるまで、シリーズの舞台として愛され続けています。

「Grand Theft Auto(GTA)」を構成する3つのシリーズ

「GTA」シリーズからは、これまでに11作品がリリース。2025年内に発売予定の最新作『GTA6』は第12作目にあたります。

これらは全てが同じ世界の話という訳ではなく、世界観を共有する「2D」「3D」「HD」という3つの物語に分かれています。

「2D」シリーズに属しているのは、『GTA』『グランド・セフト・オート2(GTA2)』の2作品。ゲームの主な内容は、ギャングからの依頼を受け、犯罪を行っていくというもの。この頃は現在とは違い、上から見下ろすような視点でキャラクターを操作していました。

シリーズの転換点となったのが、2001年発売の『グランド・セフト・オートIII(GTA3)』から2006年発売の『グランド・セフト・オート・バイスシティ・ストーリーズ』にかけて展開された「3D」シリーズ。「2D」シリーズの世界観はそのまま、全く新しい物語が展開されています。

「3D」シリーズでは、新機軸として3Dのオープンワールドを導入。広い世界を好きに歩き回りながら、物語を進めるもよし、自動車で走り回るもよし、犯罪に手を染めるもよしという、自由度の高さが評価されています。

『グランド・セフト・オートIII』 /画像は公式サイトから
『グランド・セフト・オートIII』 /画像は公式サイトから

『GTA3』をはじめとした「3D」シリーズの内外への影響は大きく、開発者自身も、「4gamer.net」のインタビューの中で後のシリーズに大きな影響を与えた作品だと振り返っています(外部リンク)。また、発売20周年を記念した「Game*Spark」のコラム(外部リンク)の中では、同作を「伝説的作品」「ジャンルとしての『オープンワールド』のスタイルを確立させたことや、ゲームに対する暴力表現批判など業界における動乱を世界中で起こしていました」と評価。ゲーム史全体を見ても重要な作品だと言えるでしょう。

「3D」シリーズは全体を通して、80年代から00年代のアメリカを舞台に、3つの街で、ギャングやマフィアとして成り上がっていく男たちの姿を描いています。時に米軍や警察も巻き込むような大事件に巻き込まれたり、時に仲間に裏切られたりといった陰謀渦巻く裏社会に焦点を当てていて、ストーリーの面でも高い評価を得ています。

「3D」シリーズの成功を経て、さらに自由に、さらにリアルになったのが、2008年発売の『GTA4』から始まる「HD」シリーズ。過去のアメリカを描いていた「3D」シリーズから再度、物語が仕切り直されていて、現代のアメリカが舞台になっています。


グラフィックがより鮮明になったほか、ゲーム性もさらに進化。ゲーム内に架空のSNSが導入されたり、不動産を購入できたりと、これまで以上に世界観がつくり込まれています。

車一つをとっても、路肩を運転している時と道の真ん中を運転している時とで、ドライブ音やコントローラから伝わってくる振動が変化。オープンカーでは、雨が降ってきた際にルーフを閉めると、本当の車内にいるかのように雨音がくぐもって聞こえたりと、運転時の表現もよりリアルなものへと近づきました。

「Grand Theft Auto(GTA)」はなぜ人気なのか?

20年にわたり進化し続けてきた「GTA」シリーズ。筆者個人としては、このシリーズが人気を得ている背景には、「アングラ感」「自由さ」という2つの理由があると思っています。

「GTA」は、アメリカのアウトローたちを描いたシリーズであり、窃盗や市民への銃撃を筆頭に、様々な犯罪行為を自由に行うことができます。

さらに「GTA」シリーズは、ボタンを特定の順番で押すことで起動できるチートモードも特徴。その内容は、キャラクターを無敵にしたり、銃の弾数を無限にしたりと、犯罪行為をさらに無茶苦茶にできるというもの。筆者が初めて「GTA」シリーズに触れた小学生の頃、好き放題にゲームの内容をハックできるという全能感は、当時の筆者をかなり強く惹きつけました。

また、このチートコード自体は、当然ゲーム内に説明がないため、攻略サイトなどから拾ってくる必要があります。筆者が小学生だった2010年前後は、まだスマートフォンが浸透しておらず、家で自由にパソコンを使える子供じゃないと、チートコードを入手することはできませんでした。

筆者個人の体験としては、小学生の頃「GTA」を持っている友達は年の離れた兄弟がいるケースが多く、他のゲームよりも大人な雰囲気を感じる憧れの対象でした。「GTA」を持っていて、家で自由にパソコンを使える人間は、子供たちの間でも一目置かれていた記憶があります。

ワザップに掲載されたチートコード/ぼかしは編集部
このページを印刷しておけば、文字通り神のような力が手に入る/ぼかしは編集部

性描写や犯罪表現を含む「GTA」シリーズは、日本のレーティング(CERO)では、18歳以上のみを販売対象とするZ指定を受けています。

裏社会やアウトローを描くゲームとしては、日本にも「龍が如く」や「喧嘩番長」といったシリーズがあります。しかし、前者は17歳以上を対象とするD指定、後者は12歳以上を対象とするB指定。その過激さは世界で大きな議論を巻き起こすことになりますが、やはり「GTA」の犯罪描写やゲーム体験は、他のゲームと比べても独特の立ち位置を築いていたと言えるでしょう。

ダウンロード販売が主流の現在はあまり意識しなくなりましたが、筆者が小さい頃はゲームショップでも「GTA」を含むZ指定のゲームは棚が分けられており、特別感を醸し出していました。

そんな「GTA」シリーズですが、現在はその自由さが少し形を変えて楽しまれています。「FiveM」というMOD(有志の制作した改造データ)が注目を集め、ストリーマーたちが「GTA」世界の住人となってリアルタイムで物語を紡いでいく企画が世界で人気を集めているのです。

例えば海外では、Twitchのフォロワー数1200万人、YouTubeのチャンネル登録者数200万人を誇るトップストリーマー・wqcさんらが参加する企画「NoPixel」が人気に。


日本でも、ストリーマーのしょぼすけさんが主催する企画「ストグラ」に数百人の配信者が参加。プレイヤーたちは警察官、パン屋、ギャングなど自由な設定のキャラクターをつくり、ゲーム内で生活し、交流する様子が人気を集めています。

「Grand Theft Auto(GTA)」シリーズでおすすめの作品

ここからは、「GTA」シリーズをプレイしてみたいという人のために、おすすめの作品を紹介します。

まず外せないのは、なんといっても最新作の『GTA5』。10年以上にわたって愛され、その販売本数は1億9500万本。『Minecraft』に次いで、世界で2番目に売れているゲームですから、その面白さは折り紙つきです。

また『GTA5』は、シリーズで初めて主人公が3人になった作品でもあります。成り上がりを夢見る若者・フランクリン、かつて銀行強盗として名を馳せ、現在はそれぞれの理由で燻っているマイケルとトレバー。数奇な運命に引き寄せられた3人は、大強盗を計画する中で過去の因縁と向き合い、それぞれが本当に欲していたものは何なのかを模索していきます。

左から、フランクリン、マイケル、トレバー/画像は公式サイトから
左から、フランクリン、マイケル、トレバー/画像は公式サイトから

本編をクリアしたら、現在まで更新が続けられているマルチモード「GTAオンライン」に手を出してみるのもいいかもしれません。プレイヤー同士の抗争も可能なため、なんでもありな魔境としても知られていますが、かつての無茶苦茶だった「GTA」の雰囲気を味わえることでしょう。

世界的アーティストであるドクター・ドレーが、エミネムやスヌープ・ドッグらとともに「GTAオンライン」のために書き下ろした楽曲も堪能できちゃいます。ゲーム内のラジオを流しながらドライブするだけでも楽しいはずです。

次におすすめしたいのは、『グランド・セフト・オート:トリロジー:決定版』。

「3D」シリーズのうちメインとなる3作を収録した大ボリュームのタイトルです。80年代〜90年代のアメリカの独特な空気感を味わうことができます。

80年代〜90年代は、ドクター・ドレーたちが登場してギャングスタ・ラップが成立していった時代でもあります。日本でもヒップホップが流行している今だからこそ、その源泉に近い雰囲気を味ってみるのはいかがでしょうか?

ちなみに、『グランド・セフト・オート:トリロジー:決定版』は、Nintendo Switchでもリリースされているので、PCやPS4/PS5を持っていない人にもおすすめできるタイトルです。

「Grand Theft Auto(GTA)」シリーズを彩ってきた名車たち

続いては、シリーズを彩ってきた名車を紹介。

まず紹介するのは、『GTA: Liberty City Stories』から「stallion」。フォードのマスタングがモデルだとされています。

フォード・マスタング
フォード・マスタング

シリーズでも登場数の多い車で、街中を走っていることも多く、プレイヤーとしても乗る機会が多い車種だと思います。最高速度が早い一方、ハンドリングが難しいのですが、「GTA」ではそれすらも魅力のひとつ。

街中を駆け抜けながら、他の車にぶつかったり曲がりきれず大クラッシュをするという「GTA」らしい体験ができるはずです。

続いて紹介するのは、『GTA5』より「ペヨーテ」。同じくフォードのサンダーバードがモデルだとされています。

フォード・サンダーバード
フォード・サンダーバード

2013年が舞台のゲームとしてはかなりクラシカルなデザインの車。『GTA5』は、サンアンドレアスの中でも特に、ハリウッドをモデルにした街・ロスサントスが舞台になっています。

「ペヨーテ」もハンドリングは難しいですが、ラジオでアメリカのヒップホップをかけながら陽気の中を走るのは、ゲームとはいえかなり気持ちのいい体験です。

最後に紹介するのは、同じく『GTA5』より「アダー」。ブガッティのヴェイロンやフェラーリの430スクーデリアをモデルにしているとされています。

ブガッティ・ヴェイロン
ブガッティ・ヴェイロン

「GTAオンライン」では、継続的なアップデートにより大量のスーパーカーが追加されていますが、『GTA5』本編で最高速度を誇っているのがこのアダーです。

スーパーカーで街中を爆走して、あまつさえクラッシュしても誰にも怒られない。まさにゲームならではの運転体験ができる車です。

「Grand Theft Auto(GTA)」シリーズおすすめの動画

最後に、「GTA」の世界を知ることができるおすすめの動画を紹介します。

まずは、人気の4人組実況者グループ・ナポリの男たちが2017年に投稿した『グランド・セフト・オート・サンアンドレアス』の動画。

この動画では、MODによってキャラクターのグラフィックが一部ポケモンに変更されています。メンバーの掛け合いもさることながら、冒頭からポケモンが暴れまわって車をボコボコにしていたりと、パンチの強い画が楽しめます

「GTA」が持つ無茶苦茶感を存分に味わえるでしょう。

続いて紹介するのは、VTuber・歌衣メイカさんのチャンネルに投稿されているストグラの切り抜き。

警察官・銀河一アニキとして街に降り立ったメイカさんが、ゲームキャスターの馬人さん演じる警察署長・ジャック馬ウアーに街の歴史を聞くという内容。

ストグラの導入として非常にいい動画になっているのに加え、参加者たちの行動によって物語が積み重ねられていくというストグラの特徴がよく表現されています。

お次は、招待制ゲームコミュニティ・vaultroomが主催したゲームイベント「VCRGTA」。こちらはサーバーが常設されているストグラと違い、キャラクター設定をつくらず、期間限定での開催だったため、より見栄えの派手な犯罪が多く起きていました。

中でも異色だったのが、ストリーマーのk4senさんが引き起こした警察署長・Sasatikkさんの誘拐事件。この事件は、銀行強盗などのゲーム内でコンテンツとして用意された犯罪ではなく、ゼロから自分で計画したもの。

期間内にプレイヤーたちが結成したギャングチームたちと協力し、即席の合同チームで署長を襲撃。逃走経路を考えたりと、まるで映画のような計画を立てる様や逃走劇、事件の顛末まで、ひとつのエンタメとして完成されています。

ゲーム実況とは違いますが、押さえておきたいのがドクター・ドレ―とエミネムによる楽曲「Gospel」のファンメイドのMV。

ドクター・ドレ―もストーリーに登場する「GTAオンライン」のDLC「GTAオンライン:契約」のリリースと共に発表された同曲。ファンが制作したこのMVは、実際に「GTAオンライン」の中で撮影されています。

アメリカのストリートカルチャーの発信源として機能していた「GTA」が、実際にドクター・ドレ―とコラボしている。そして、非公式のものといえど、MVを撮影できてしまうほどの自由度がゲーム内に存在している。このMVの存在自体が非常にユニークだと思います。

最後に、映像として見逃せないのが、『GTA6』のトレーラー。『GTA5』から12年を経て、さらにリアルに進化したグラフィックは必見です。

また、このトレーラーには作中のSNSに投稿された動画が連続で映されるシーンがあるのですが、それぞれの映像には現実で話題になった映像のオマージュが隠されています。

各動画の元ネタは盛んに考察されているので、ぜひ調べてみてください。

関連リンク

ロックスター・ゲームス|公式サイト
ロックスター・ゲームス|公式YouTubeチャンネル

  • Writing: みらいん

『GTA6』って開発が遅れてるっていう噂があるけど大丈夫かしら……

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