「ABARTH 500e」試乗レビュー アバルト味の濃いホットハッチBEV

こんにちは。元トヨタの企画・ハマやんです。

イタリアのスポーツカーメーカー・アバルトが、バッテリー式電気自動車(BEV)「NEW ABARTH 500e」を、2023年10月に発売しました。

「FIAT 500e」に引き続き(※)、市場に投入されたアバルトブランド初のBEV。

日本カーオブザイヤーの10ベストカーにも選定されたその魅力・特質はどんなものか……? 販売店で試乗してみました。

(※)詳細を語ることは避けますが、アバルトはイタリアの自動車メーカー・フィアットと歴史的に密接な関係があります(外部リンク)。「NEW ABARTH 500e」は、FIAT 500(チンクエチェント)のBEV版「FIAT 500e」をベースにしています。

FIAT 500は、ルパン三世の愛車として知られているよ!

アバルトでありかつBEV その両面性のある外観

NEW ABARTH 500[1]

ベースモデル同様のコンパクトな車体にアバルトのスパイスを効かせた「NEW ABARTH 500e」。

コンパクトで走りのよい、かつ動力源はバッテリーという両面性が、外観でも表現されていると思います。

BEVとしての意匠は、フロントにグリル(ヘッドライトの間についている格子状のパーツ)がなかったり、排気管がなかったりと、「FIAT 500e」同様控えめ。

しかし、アバルトらしさは、インパクトある車体の色やバンパー・ホイールの独特な形状、車体各部に配されたサソリのマーク(ブランドロゴ)など、一見して伝わってくる強烈さがあります

カーレース(自動車競技)を出自とするアバルト。“走りへの期待感”を高める外観だと思いました。

内装もアバルトらしさとBEVらしさを両立+上級質感

NEW ABARTH 500[2]

アバルトらしさとBEVらしさの両立は、外観だけでなく内装にも共通しています。試乗の際、ドアを開け座ると、室内からは「走りに特化したBEV」というメッセージが強く発せられていました。

シート・ステアリング・ペダルは、アバルトらしくスポーティなデザイン。その一方、正面のメーター類の表示やインパネ(インストルメントパネル、計器版)下部に配置されたシフトボタンは、BEVらしさを感じさせます。両方の要素がうまく併存しているように感じました。

NEW ABARTH 500e[3]

また、トリム(車内の内張り)やインパネの表皮が、他のアバルトモデルと比べて、シックで上級質感あるトーンでまとめられている点も、この「NEW ABARTH 500e」の特徴ではないでしょうか?

室内空間は、サイズの小さなAセグメント(およそ全長が3.8m以下、全幅が1.7m以下)のクルマ(※)のため限られてはいます。

しかしアバルト化されたデザイン・質感によって、より上級な2+2シーター(大人用シート2人分に補助席2人分を加えた)のスポーツカーにでも乗っているような雰囲気に浸ることができました。

(※)「NEW ABARTH 500e」は、(全長)3675mm×(全幅)1685mm×(全高)1685mm。ホイールベースは2320mm。全高以外はあの「MINI 3 DOOR」よりも小さい(!?)

「これがBEV?」すべてがアバルトっぽい走り味

走り始めると、BEVかどうかよりもアバルトかどうかに気持ちが行きました。

走り味や走行音が、「これぞアバルト!」的なものにチューニングされ、五感に伝わってきたからです。

NEW ABARTH 500e[4]
NEW ABARTH 500e[5]
外部音にチェックを入れると、アバルトサウンドが内外に流される

アバルトは歴史的に小さなクルマ・小排気量なクルマ(それでも速い)をつくってきたブランドです。

そのために、小排気量エンジンをギリギリまでチューンして搭載する……そんなアバルトらしい、比較的高音域で上まで伸びていくようなエンジンサウンドが、車体外側(アンダーフロア)に配置されたスピーカーから流れる仕組みになっています。

BEVにも関わらず、まるで高性能エンジン車に乗るような気分で走行できる点が第一のポイント(ON/OFFも可能)。

しかも音だけではなく、155PS・235Nmのモーターによる走り味もBEVらしいトルク(タイヤを回転させる力)感溢れるもので、ついつい加減速を楽しんでしまうものに味付けされていました。濡れた路面でフル加速すると、ホイールスピン(空転)もするほどでした。

BEVゆえに、エンジン車のアバルトとは違う走り味ですが、その前提で「いかに走りを楽しませるか」をポイントに開発されていると感じました。

NEW ABARTH 500e[6]

このクルマなら、街中や郊外路を、ちょこっと走って加減速を楽しんで、気分転換するような使い方ができそうです。

ドライブモード切り替え・アクセルの踏み方など、できる範囲で色々試してみましたが、基本的には、EVらしさより面白さ重視で、電気自動車時代のアバルトらしさを具現化・提唱しているような気がしました。

乗心地はBEVの落ち着きはあるが、基本はアバルト

乗心地は基本、硬めで辛口ですが、BEVの基本特性(フロアに重量のあるバッテリーを搭載)である落ち着きも感じさせてくれるものでした。

街中でよくある路面の段差や荒れに対して、動きは忠実に伝えてくるが、角は丸められており不快ではない……といった感じです。こうした乗心地も、「アバルトに乗っている」実感を持たせてくれる大きな要因だと思います。

NEW ABARTH 500e[7]

「NEW ABARTH 500e」は、車両価格630万円と、コンパクトなクルマにしては高価格にも関わらず、充電走行距離で300km程度しか走行できず、どんな用途にも適合するようなクルマではありません。

しかし、他にはちょっと見当たらない「ホットハッチ(高性能ハッチバック)BEV」で、しかもアバルト味濃く仕立てられている点が持ち味だと思いました。

「こんな電気自動車化もあるのか?」という感想が、このクルマに乗って脳裏をよぎりました。とてもユニークな商品だと思います。

アバルト「NEW ABARTH 500e」ハマやんの評価

ハマやん
ハマやんです。2000台以上試乗してきたクルマのプロです。

Q1.乗る前の期待値に対してどうだった? 

評価A:電気自動車化してもアバルトらしさを実現している点は期待値越え。

Q2:乗った後、また乗りたくなった? 

評価B:ちょっとした気分転換に時々乗れるような機会があれば乗りたいけど……。

(※)S、A、B、C、Dの5段階評価。Sが最高評価。Dが最低評価。

試乗車:NEW ABARTH 500e
車両価格:¥6,300,000
主要スペック
全長x全幅x全高・WB・車重;3675mmx1685mmx1520mm・2320mm・1360kg
モーター;155PS,235Nm, 駆動;FWD
リチウムイオンバッテリー;総電力量42kWh
サスペンション前/後;ストラット/トーションビーム,
タイヤ前/後;205/40R18
WLTC;303km

  • Writing: ハマやん

あの「MINI 3 DOOR」よりも小さいのよ。可愛いわね。

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