車を所有・運転する上で、誰もが気になるのが「燃費(ねんぴ)」です。燃費が良い車は、それだけガソリン代の出費が少なくなり、家計にも地球環境にも優しいため、車選びの最重要項目の一つとなっています。
しかし、「カタログ燃費」と「実燃費」の違いや、「なぜ運転方法で燃費が変わるのか」といった仕組みは、初心者の方には少し分かりにくいかもしれません。
このコラムでは、車の燃費に関する基礎知識から、燃費が良い車の選び方、そして今日から実践できる燃費向上テクニックまでを、分かりやすく徹底解説します。
1. 燃費とは何か?基本の「3つの単位」を理解する
燃費とは、「燃料の消費効率」を示す数値です。この数値が大きいほど、燃費が良い(少ない燃料で遠くまで走れる)ということになります。
単位①:km/L(キロメートル・パー・リットル)
- 意味: ガソリン1リットルあたりで、何キロメートル走れるかを示す最も一般的な単位です。
- 例: 燃費が15.0 km/L の車は、1リットルのガソリンで15キロメートル走行できます。
単位②:カタログ燃費(WLTCモード)
- 意味: 国が定めた方法で測定された、メーカー公表の燃費数値です。
- WLTCモードとは?: 2017年から導入された、世界共通の新しい燃費測定方法です。「市街地(低速)」「郊外(中速)」「高速道路(高速)」の3つの走行パターンで測定され、従来の測定方法よりも実際の運転状況に近いとされています。
- 注意点: あくまで試験場でのデータであり、エアコンの使用や渋滞といった要素は含まれません。
単位③:実燃費(じつねんぴ)
- 意味: 実際にドライバーが運転したときの燃費です。
- 注意点: 走行環境(渋滞、坂道)、運転の仕方(急発進、急ブレーキ)、エアコンの使用頻度など、様々な要因でカタログ燃費よりも一般的に10%〜30%程度低くなることが多いです。
2. なぜ「実燃費」はカタログ燃費より悪くなるのか?
実燃費が悪くなる主な理由は、車がエネルギーを「無駄に消費する瞬間」があるからです。
原因 1:加速・減速の繰り返し
- 無駄な消費: 最も燃費を悪化させるのが、アクセルを強く踏み込む急加速です。燃料を大量に消費して加速しても、すぐにブレーキを踏んでしまえば、そのエネルギーは熱に変わって捨てられることになります。
- 渋滞の影響: 渋滞が多い街中では、加速と減速の繰り返しが多くなるため、必然的に燃費が悪化します。
原因 2:エアコンの使用
- エンジンの負荷: エアコンの「冷房」(A/Cスイッチ)を使うと、コンプレッサーを回すためにエンジンの力を使うため、燃費が5%〜15%程度悪化すると言われています。
- 暖房の影響: 暖房はエンジンの熱を利用するため、基本的には燃費への影響は少ないですが、ハイブリッド車などで暖房のためにエンジンが作動すると燃費が悪化します。
原因 3:車の重量と空気抵抗
- 荷物の積載: 重い荷物を積んでいると、車を動かすためにより大きな力(燃料)が必要になるため、燃費が悪化します。
- 空気抵抗: 高速道路では、スピードが上がるほど空気の抵抗が大きくなり、燃費が悪化します。
3. 燃費を向上させる「エコドライブ」の7つのコツ
ドライバーの心がけ一つで、実燃費は確実に向上します。今日から実践できるエコドライブのコツを紹介します。
コツ 1:ふんわりアクセル(急発進の禁止)
- 目標: 最初の5秒間で時速20km程度まで、ゆっくりと、やわらかくアクセルを踏み込みましょう。
- 効果: 燃料の急激な消費を防ぎ、燃費が大幅に向上します。
コツ 2:一定速度での走行を心がける
- 目標: 前の車や信号をよく見て、無駄な加速や減速を減らし、できるだけ一定の速度を保って走行します。
- 効果: 加速・減速によるエネルギーの無駄な消費を防ぎます。高速道路では、アダプティブクルーズコントロール(ACC)などの機能を積極的に活用しましょう。
コツ 3:早めのアクセルオフ
- 目標: 信号や前の車の停止が見えたら、早めにアクセルから足を離します。
- 効果: 燃料の供給をカットしながら走行できる「エンジンブレーキ」の状態を作り出し、燃料消費を抑えます。(ハイブリッド車では、この時モーターが発電してバッテリーに充電されます。)
コツ 4:タイヤの空気圧を適正に保つ
- 重要性: 空気圧が低いと、タイヤと路面の摩擦(転がり抵抗)が増え、燃費が悪化します。
- 対策: 月1回程度、ガソリンスタンドや整備工場で空気圧をチェックし、メーカー指定の値(運転席側のドア付近に記載)に合わせましょう。
コツ 5:不要な荷物を降ろす
- 対策: トランクや車内に、ゴルフバッグやキャンプ用品など、普段使わない重い荷物を積みっぱなしにしないようにしましょう。
- 効果: 車体が軽くなることで、発進・加速に必要な燃料消費を抑えられます。
コツ 6:エアコンの使い過ぎに注意
- 対策: 外気温が耐えられる範囲であれば、エアコン(冷房)の使用を控えたり、内気循環をうまく使って外気の暑い空気を取り込むのを避けたりしましょう。
- ポイント: 窓を開けて走るよりは、エアコンを使って窓を閉めた方が、空気抵抗が減るため、燃費が良い場合もあります。(ケースバイケースです)
コツ 7:アイドリングストップを有効活用
- 対策: 停車中(特に数分以上の信号待ちなど)は、エンジンを停止しましょう。
ポイント: 最近の車は自動でエンジンを停止させる「アイドリングストップ機能」が搭載されていますが、搭載されていない車は、手動でエンジンを切ると効果的です。
4. 燃費が良い車の「選び方」のポイント
これから車を購入する場合、以下のポイントをチェックすることで、燃費の良い車を選ぶことができます。
ポイント 1:ハイブリッド車(HV)を選ぶ
- 燃費性能を最優先するなら、ガソリン車よりもハイブリッド車(HV)が最も経済的です。特にトヨタのプリウスやホンダのフィットe:HEVなど、モーター走行が主体となるモデルは、街乗りでの燃費が非常に優れています。
ポイント 2:車のサイズと重量を確認する
- 軽自動車やコンパクトカーは、車体が軽いため燃費が良い傾向があります。使用目的に合っていれば、小さな車を選ぶ方が経済的です。
- SUVやミニバンなど、車体が大きく重い車は、一般的に燃費が悪くなります。
ポイント 3:駆動方式を確認する
- 2WD(二輪駆動)は、4WD(四輪駆動)よりも構造がシンプルで軽いため、燃費が良いです。雪道や悪路を走る機会が少なければ、2WDを選ぶ方が経済的です。
5. まとめ:燃費向上は「安全運転」に繋がる
燃費を向上させるためのエコドライブは、実は「安全運転」そのものです。
- 予測運転: 早めに信号や前の車の状況を見てアクセル操作を行うことは、急ブレーキや急ハンドルを防ぎ、結果的に事故の危険性を減らします。
燃費計を意識しながら優しく車を運転する習慣をつけることが、ガソリン代の節約、車の長寿命化、そして交通事故の防止という三つのメリットに繋がります。今日から「ふんわりアクセル」を意識して、エコドライブを実践してみてください。










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