ディーラーって何? 年間100台売った営業マンに聞く、自動車ディーラーとの付き合い方

街の主要な幹線道路沿いなどで見かける車の販売店こと「ディーラー」。車を買おう! という時でなければ訪れることもないので、見かける機会は多くても、なんとなく近寄りがたさを感じるかもしれません。

店内に並んだピカピカの車、そこに出入りするカッコいい大人たち。気にはなるけどよくわからない、ディーラーってどんな場所なの?

今回素朴な疑問を解決してくれるのは、トヨタ自動車が展開する新車のサブスクリプションサービス「KINTO」で働く、元ディーラーの営業マンだった佐野さん。営業マン時代には、年間100台を売り上げる敏腕社員でした。

ディーラーの種類や役割についてはもちろん、営業マンとお客さんの関係、良い営業マンの見分け方など、気になることを全部解説してもらいました!

ガツガツ営業されちゃうんじゃないの〜?

ディーラーとはいったい何なんだ?

──では早速、ずばり「ディーラー」とはどんな存在なんでしょうか?

佐野 ディーラーとは、自動車販売店のことを指します。特に新車を扱っている直営店をディーラーと呼ぶ場合が多いです。他の小売店などでは聞いたことがない言葉なので、いわゆる自動車業界用語ですね。

他にも、街の「〇〇自動車店」みたいな、いくつかのメーカーの新車を扱っている直営ではない販売店をサブディーラーと呼んだりします。中古車販売店もありますが、そちらをディーラーと呼ぶケースは少ないかと思います。

ディーラーについて色々教えてくれる佐野さん
ディーラーについて色々教えてくれる佐野さん

──ディーラーは業界用語だったんですね。訪れるお客さんは、どんな目的の人が多いんでしょうか?

佐野 一番多いのは、ディーラーで車を買ったあと、車のメンテナンスや点検のために来ている方ですね。あとは当然、新車を買いたい人です。でも割合で言うと、9割くらいは前者です。

──車を買った場所で、点検なども行ってくれるんですね。つまり、ほとんどの方はリピーターということですか?

佐野 でも、新車は基本的にディーラーでしか取り扱いがないので、新車を買いに来てくださる方は一見さんというか、はじめましての方も多いですよ。

同じ正規店でも、各メーカーごとや輸入車(外車)のディーラーではそれぞれ雰囲気が違うんです。

正規ディーラーサブディーラーかでも違いますし、担当してくれる営業マン次第で、ディーラーに抱かれる印象は変わってくるかもしれません。

まさに「これ!」なディーラーのイメージ
まさに「これ!」なディーラーのイメージ

──正規店とサブディーラーだと、どんな違いがあるのでしょうか?

佐野 まずは取り扱い車種が違います。正規ディーラーでは、取り扱いメーカーが決まっているので、トヨタならトヨタ車のみを取り扱っていて、日産やホンダなど他のメーカーの車は扱っていません。サブディーラーではメーカー問わず取り扱っているお店も多くあります。

他には、正規ディーラーは車をつくっているメーカーから直接車を仕入れていますが、サブディーラーはメーカーではなく、正規ディーラーから新車を仕入れてお客様へ販売をしています。

初来店の方には、正規ディーラーはメーカーから認定を受けている店舗なので、安心感が強いという人も多いのではないでしょうか。特に都会にある店舗だと、初来店の方も多いので入りやすいのではないかと思います。

ただ、正規ディーラーはしっかりしている分、メンテナンスなどの料金はサブディーラーよりちょっとだけ高いケースが多い気がします。

ディーラー=ガンガン営業してくる……ではない

──ディーラーは人からどんな印象を持たれていると感じますか?

佐野 僕の営業時代に、たまに言われたのは「ガンガン営業されるんでしょ?」とか(笑)。だけど、今はそういった体育会系な営業をする店舗は少なくなっていると思います。

店舗にいらっしゃる時点で、どの車種が気になるとか、どのくらいの予算感かなどを決めて来店される方が多いので、基本的にはお客様の要望に合うよう、ご提案していきます。

──たしかに……なぜか怖い印象を持っていたかもしれません。すみません!

佐野 いえいえ。僕も新入社員だった頃は、担当するエリアの方々のお住まいに飛び込み営業していたので、あながち間違ってない部分もあると思います。当時は保険営業に近かったかもしれません。だけど時代の流れとともに、ディーラーもだんだん"待ち"の営業スタイルになっているところが多いと思います。

もちろん販売店それぞれの考え方があるので、今でもお客様のホームパーティに招待されるほど濃い付き合い方をしている営業マンもいると思います。ただ、急に一番高い車を勧められるということはないので、安心してください。

値引き交渉はあり?なし?「聞いてみてOK」

──最初にディーラーで見積もりを出してもらったあと、「一度帰って考える」という回答でもいいんですか?

佐野 もちろんです。「今日決めてくれるまで帰しません!」なんてことはないので、安心してください。

初心者丸出しの質問にも笑顔で答えてくれる
初心者丸出しの質問にも笑顔で答えてくれる

──(ほっ)。

佐野 ただ、新車購入の際は値引き交渉をされる方が多いです。

担当になる営業マンの采配にもよるので、実際の値引き額は一概には言えないのですが、購入をいつ決めるかに関係なく、どのくらい値引きできるのかを聞いてみるのはいいと思います

──そういうものなんですね。たとえば大阪のおばちゃんスタイルで値引き交渉前提でも……?

佐野 値引き交渉には時間がかかるため、営業マンの労働時間削減を目的に、販売店によっては「値引きは一切してないんです」と断られる場合もあるかもしれません。ただ、お店や車種によっては今でもしっかりと値引きしてくれる営業マンがいることは事実です。

一番いいのは知り合いで新車を買った人に、良い対応だった営業マンを聞くことですね。紹介だけでお客様をたくさん抱える営業マンもいますが、そういう人は忙しいので、なかなか直接店舗に行っても対応してもらえないことが多いんですよ。

ディーラーでの新車購入の良し悪しは営業マン次第

──買いたい車が決まっている人からすると、ディーラーはシンプルに新車の契約をする場所、という存在なんでしょうか?

佐野 そういう人もいますが、新車購入は決して安い買い物ではないので、悩んでご来店される方も多いですよ。コロナ禍はオンラインでの接客対応なども行っていたのですが、今はまたご来店していただくスタイルが主流になってきています。

だいたいの販売価格はネットで調べればすぐ出てきます。ただ、実際に車を買う時には、オプションや自動車保険など、色々とプラスでお金がかかることが多い。

なので、まずは「欲しい車種の見積もりをもらいたい」というパターンもありますし、試乗してから検討する人もいます。

佐野さんにいわく、試乗の時は「実際に運転するかはともかくとして、運転席には座った方がいいと思います」とのこと
佐野さんにいわく、試乗の時は「実際に運転するかはともかくとして、運転席には座った方がいいと思います」とのこと

──“車を買う時にプラスでかかるお金”は、一般的にだいたいどの程度想定しておくのが良さそうですか?

佐野 ホームページ等でみた車の価格+50万円くらいで考えていただくのがいいかもしれません。追加でかかる費用の主なものは、①グレード変更②オプション追加③諸費用 の3つです。

①のグレードは、同じ車でもその装備によってランクが分かれています。販売店ではグレードごとの装備差と、価格差だけでなく、他のお客様がよく選ぶグレードやその理由なども教えてくれるので、最初に想定していたグレードよりも上級のグレードになることが多いです。

②のオプションは、安全装備の追加や見た目のドレスアップなどいろいろな種類があるのですが、説明されるとあれもこれも欲しくなると思います。最低限に厳選しても、ある程度はオプションを付ける方が非常に多いです。

③の諸費用は、車を購入する際にかかる税金や手数料のことです。これらはマストでかかる費用で車種や店舗によって金額は変動しますが、10~20万円程度かかります。

実際に店舗で説明を受けながら検討していくうちに、予算が上がっていくことは多いかもしれません。

──お話を聞いていると、ディーラーでの新車購入体験は、担当してもらう営業マン次第で変わってきそうですね。

佐野 そうですね。逆に言えば、良い営業マンであれば、お客様の購入後の満足度も高くなります。車を買った後も、故障の際や車検関係などで、担当者とは連絡を取り続けていくことになるので。

相性の良くないディーラーと出会ったら……

──車を購入した後も関係が続くとなると、できれば相性ばっちりな営業マンに担当してもらいたいですよね……紹介してくれる人がいる場合はいいとして、来店時はどんな点に気をつけてディーラーや営業マンを見ればいいのでしょうか?

佐野 最初は、最寄りの店に行っていただくのでもいいと思います。ただ、担当者と話していて「フィーリングが合わないな」と感じたら、別の店に変えるという選択肢もありだと思います。

営業マンとお客様も人同士なので、相性の良い/悪いがあります。相性の良くない人とやり取りを続けるのは、お互いのストレスになりますし、満足のいく買い物ができるとは思えません。

販売の時に手際が悪い担当は、アフターケアの対応もよくない可能性が高いので、最初の来店で不安を感じた場合は、店舗ごと変えてしまいましょう。

大きな買い物なので相性は大切。「ちょっと違うな……」と感じたら別の店舗へ
大きな買い物なので相性は大切。「ちょっと違うな……」と感じたら別の店舗へ

──担当者を変えてもらうことはできないんでしょうか?

佐野 店舗内で担当者を替えることもできますが、かなり珍しいケースです。それに、2人連続で相性の良くない人だったら心理的にもちょっとキツイでしょうから、店舗ごと変えてしまった方がいいと思います。

具体的なところで言うと、たとえば、装備の有無を説明する時などに「○○だと思います」「○○のはずです」など、曖昧な語尾で話す営業マンは要注意ですね。

車のプロでありながら知識が足りておらず、誠実さもないので、後々トラブルになる可能性があります。ただ、知識はなくてもその場でちゃんと確認して答えたり、「○日までに確認します」と返答日時を切って、期限内に連絡してくれる人は、良い営業だと思います。

ディーラーで良い営業マンを見抜く方法

──ちなみに、良い営業マンの見分け方はありますか?

佐野 一般的な話ですが、見た目に清潔感がある人は、自分のことを客観視できる営業マンだと思います。「自分がどうすればお客様が喜んでくれるか」を考えられる人として、一つの参考になると思います。あとはやっぱり、質問に対して曖昧な返事をしない人ですね。

とはいえ、ディーラーにも異動や転勤があるので、未来永劫同じ営業マンとやり取りして、車を買い替え続けられるとは限りません。営業マンだけでなくお客様側も、引越しなどで最寄りのディーラーに通えなくなってしまうことがありますから。

そういう時、異動前にお世話になったお客様に連絡する、お客様の引越し先にある系列店に連絡して繋いでくれるなど、細やかな対応してくれる営業マンがいるのも事実です。

営業マン時代、きめ細やかな対応を意識していたという佐野さん
営業マン時代、きめ細やかな対応を意識していたという佐野さん。初契約は、「営業で何度も訪れていた人から突然電話があって。僕にお願いしたいと言われた時は嬉しかったですね」と当時を振り返りました

──そこまでしてくれると、買う側としても「この人に貢献したい」と思えるかもしれません。ディーラーの営業マンは、色々なことに気配りができないといけないんですね。

佐野 そうですね。当たり前の気配りができない営業マンもいるので、そこは注意した方がいいかもしれません。

──ディーラーに行く時は、丁寧で確実な対応か否かを意識したいと思います!

佐野 以前はお客様と飲みに行ったり、ゴルフに行ったりして、関係性を構築していくことが多かったと思います。でも最近では、LINEで気軽に相談を受けるなど、昔とはまた違う対応が求められていると思います。

ただ、時代は変わっても、ディーラーの営業は車販売のプロ。ネットで色々な情報を調べて来てくださる方もいるのですが、間違った知識をお持ちの方もいます。現在の車の購入方法や新車のスペックなどの情報に関しては、ネットよりも信用に足る情報をお渡しできるはずです。

ディーラーは決して初来店の方に冷たい場所ではないと思いますので、まずはぜひ来店して、営業マンから話を聞いてみてほしいですね。

KINTOのマスコットキャラクター・くもびぃと一緒に
KINTOのマスコットキャラクター・くもびぃと一緒に

──失敗しないようにと、なんでも事前にネットで調べがちですが……新車購入に関しては、信頼の置けるディーラーさんを頼るのが良さそうですね。

佐野 その通りです! 営業マンと合う合わないはありますが、信頼できる営業マンと巡り合えれば、きっと1人で調べるよりも良い買い物ができると思います。

車は決して安い買い物ではないので、人を見る目に厳しさを持ちながら、理想の関係を築けるディーラーを見つけてみてください!

関連リンク

KINTO 新車のサブスク|公式サイト

  • Writing: ミクニシオリ

  • Photo: 宇佐美亮

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