突然ですが、車のスペックの見方って難しすぎないですか?
普段から車によく乗ってる人ならともかく、ペーパードライバー相手にトルクがどうとか馬力がどうとか言われても、それを比べられるほど色んな車に乗ったことがない。「燃費の効率が~」とか、「環境によっては四駆の方が~」とか、「車高によって走破性が~」だとか!
専門用語で言われれば言われるほど、結局それがどんな結果につながるのかが想像もつかなくなるじゃないですか。
もっとこう、「真正面からぶつけたら硬いのはこっち!」とか「急な坂道を一斉に登らせたら最強はこのクルマ!」みたいに、車のスペックが目で見て分かるような方法はないものか……と、お悩みのそこの貴方。実は、あります。
その名も『BeamNG.drive』。10年にわたって今なおアップデートが続けられている、物理エンジン搭載型リアルワールドドライブシミュレーションの最高峰とも呼ばれる、”ゲーム”です(外部リンク)。
ゲームなのでゲーマーにはおなじみのPC向けゲーム販売プラットフォーム・Steamでも販売されていますし、お値段は2,800円と実にお手頃。もちろん、あくまでシミュレーションの話ですから現実の車選びにそのまま参考にできるわけではありませんが、ペーパードライバーがスペックを検証する程度なら十二分とも言える機能を誇ります。
この記事では、そんな『BeamNG.drive』の物理シミュレーションを用いて、車のスペックが一目で分かる遊び方を皆さんにご紹介しましょう。
さぁ、ペーパードライバーの貴方こそ、『BeamNG.drive』で思う存分クルマをぶっこわ……いえ、思う存分クルマを”試して”みませんか!
“駆動方式”を知るには……一旦駆動部を止めてみよう!
まずはこちらの画像をご覧になってください。これは『BeamNG.drive』の車種選択画面。左側に並んでいるのが選べる車種で、右側に並んでいるのがその車のスペック表です。

スペックを拡大してみましょう。”駆動方式”、”馬力”、”トルク”。ペーパードライバーにも耳なじみのある単語がいくつか並んでいますね。例えばこの車の駆動方式はRWD。RWDとは日本語で後輪駆動のことで、アクセルを踏むと後輪が回転する車のことです。一般的に後輪駆動の車は前輪駆動の車に比べてハンドリングが安定しやすいと言われており、スポーツカーなどにも多く採用されている方式です。

後輪駆動の車は、エンジン位置が前のものからフロントエンジン・リアドライブ方式(FR)、ミッドシップエンジン・リアドライブ方式(MR)、リアエンジン・リアドライブ方式(RR)の3種に大別され、FRの車は重心が前にあるため比較的スリップしやすい、RRの車は逆に重心が後ろにあるため高速走行時の安定性が悪いといった特徴があるのですが……。正直、こんなこと文字で書かれれば書かれるだけ、分かりにくくありませんか。
でも、大丈夫。車の“駆動方式”を知るには、一旦駆動部を止めてみればいいんです!

やり方はいたって簡単。まずは『BeamNG.drive』を起動し、メインメニューから自由に走り回るフリ-ロームモードを選択しましょう。お好きなコースを選択し、お好きな車を選択。今回はコースに西海岸のチャイナタウン、車は一般的なセダンタイプのタクシーを選んでみました。
右下の「Start Freeroam」をクリックすれば、自由に走れるテストコースに出ることができます。一般的なキーコンフィグでは、キーボードの上キーで前進、下キーで後退、左右のキーでハンドルを切ることができます。困ったときにはRキーでリセットしてください。
無事に車を発進できたら、早速そのあたりの電柱に正面から激突してみましょう。

ドガン!
大破した車は一瞬で動かなくなってしまいました。
当たり前のことに思えるかもしれませんが、実はこの結果にこそスペックに書かれていたことの意味が現れています。画面左下を見てみてください。車のどの箇所が破損したのかが赤く表示されています。
電柱に正面衝突したので、当然、破損しているのは車の前方のパーツのみ。この車は前方にエンジンが搭載されていたために、壊れて動かなくなってしまったことが読み取れます。フロントエンジン・リアドライブ方式(FR)の車は、その構造上衝突時には駆動部を損傷しやすいということですね。
では、リアエンジン・リアドライブ方式(RR)のスポーツカーではどうでしょう。現実ではポルシェなど一部の車種でしか採用されていない方式ですが、発進時やブレーキ時の力強さでも知られています。

そして当然、エンジンを車体後方に積んでいるため……、正面衝突の事故の後も、エンジンは無傷で動きます。
ただキーを前に押してみるだけでも、重心の違いによる車体の揺れの違いがあり、ブレーキのかかり方に違いが出てくる。駆動方式一つで車がどうやって変わるのかが、目で見て分かってもらえたんじゃないでしょうか。

”トルク”や“馬力”を知るには……車同士を戦わせるんだよ!
”トルク”や“馬力”などの数値化されたカタログスペックは、数値で比較することができ来る分、性能差は分かりやすいですが、数値化されている分むしろ性能差が実際の運転にどう影響しするのかが直感的に分かりにくくもあります。

でも、それも大丈夫。数値の算出には専門家が多くの条件を考慮に入れた複雑な計算式が用意されているわけですが……今は一旦その全てを無視して、単純に車同士を戦わせてみましょう。
フリ-ローム中にESCキーを押すとメニューが表示されます。上のタブから「車両」をクリックし、お好きな車を選択。右側下部にある「Spawn New」をクリックすると、車がもう一台コースに追加されます。ここまでくれば、車同士を戦わせる準備は万全です。

まずは“トルク”を比較してみましょう。“トルク”、それはエンジンの持つ純粋なパワー!
車同士に単純な力比べをしてもらうなら、やはり車同士で綱引きをしてもらう他ありません。今回はファミリーに人気のワゴンと、スポーツカーの二台を用意しました。車と車を背中合わせに並べたら、Ctrlキーを押してみましょう。車体全体に緑色の円が表示されるようになります。
これらの緑色の円はその車体を「掴める」部分で、カーソルを合わせて左クリックすればそこを中心に車を引っ張ることもできます。今回は一方の車の背中部分を引っ張り、もう一方の車の背中部分の緑色の円に近づけて、マウスホイールを押します。

これで二つの車を”接着”することができました。一方がアクセルを踏めば一方が引っ張られる。もう一方がアクセルを踏めばもう一方が引っ張られる。では、二台が同時にアクセルを踏めばどうなるかは……もう、お分かりですよね。
『BeamNG.drive』にはAIに車を動かしてもらうオプションがあるので、今回はそれを利用しましょう。Eキーを押して表示されるラジアルメニューから、「AI」を選択し、「逃げろ」を指示してみましょう。AIの車は、貴方の車を引きずったまま一目散に走り出すようになります。

結果は……圧倒的にワゴンの勝利!
トルクの数値はスポーツカーの方が大きいのに、なぜここまでの逆転現象が起きてしまうのか?
「スペック上の数字は信用できない!」という話ではありません。綱引きの様子を見てみると、ワゴンのタイヤがのろのろと回転している一方で、スポーツカーのタイヤは超高速で回転しながらも空転してしまっています。
エンジントルクとはあくまでエンジンを動かす力強さを示すものであり、重量などの影響を受けながら前に進む力を路面に与える、実質的トルクの力強さとは位置づけが異なるのです。
カタログスペックの数値が何に影響を与え、実際には何が起きるかの好例ですね。
”馬力“が知りたいなら……とにかくアクセルを踏むしかない!
“馬力”はどうでしょうか? “馬力”は車の最高速度を決める超重要なポイントです。せっかくのカーシミュレーターですので、一度はレースでも遊んでみましょう。

直線一本道のコースでアクセルベタ踏み、100kmに到達したら急ブレーキを行い、停止できるまでの距離を測ります。比較するのは1990年代には一般的だったタイプのクーペ。
今回は純粋な性能比較の為、エンジン以外は同モデルの2台を選んでみました。1台は馬力122bhp(Brake Horsepower:ブレーキ馬力)で、軽量かつハンドリングが良く、コンパクトカー向けの出力。1台は馬力139bphで、コンパクトSUVやハイブリッド車でよく見かけるエンジン出力です。

走り出した2台はスタートにこそ大差ありませんが、馬力139bphの車は走り出しからグングンと加速していきます。馬力122bhpの車がギア6に入ってからの加速に伸び悩む中、馬力139bphの車はスピードが乗ってからも速度の伸びが落ちることがなく……スペック通りの快勝!
2台のカタログスペックだけを見ると時速100kmへの到達速度は0.5秒しか変わらないとも感じますが、現実には50m以上の大差をつけられてしまうことが分かります。エンジン性能を重視するドライバーは、こうした側面を気にしているわけですね。

“走破性”を知るには……実際に走らせてみる以外にない!
ゲームである『BeamNG.drive』上では数値化できても、実際の車では数値化が難しいマシンスペックもあります。その最たるものが”オフロードスコア”でしょう。
これは現実では”走破性”とも呼ばれる性能で、ようは「未舗装路などの悪路や障害物のある道をスムーズに走行する力」のこと。ゲーム上は各車種に目安となるスコアが割り振られていますが、実際には車のあらゆる要素から複合的に生み出される性能であり、スペックだけを見て単純比較することが難しいのです。

ざっと影響しそうなポイントをあげてみるだけでも、悪路で車体を傷つけないために必要な車高に、凹凸道でタイヤが上下に動く長さを示すサスペンションストローク、衝撃を吸収して運転の快適性を上げるサスペンション剛性に、もちろん最初に紹介した駆動方式だって絡んできます。
凍結路、岩肌、雨の日に砂浜まで。この世に様々な悪路がある限り、走破性にも様々な方向性があるということです。当然、そんな能力をスペックだけ見て比べるのは容易ではないわけですが、”試して”いいなら単純比較する方法も、あります。
悪路での“走破性”を比較したいなら、実際に悪路を走らせちゃえばいいんですよ!
大都市の真ん中からジャングルまで。『BeamNG.drive』にはインストール直後から様々なコースが収録されています。今回は、砂地・凹凸・傾斜と悪路の三条件が整ったイタリアの採石場を選んでみましょう。

走らせるのは西海岸の街中で圧倒的な性能を見せつけたリアエンジン・リアドライブ方式(RR)のスポーツカー、カタログスペック上は本作でも最高クラスの数値を誇るマシンです。
RRはトラクションとも呼ばれる駆動力が強く、砂地でも圧倒的なパワーでどんどん加速していきます。

しかし、都市部の舗装された道路ではそこまで気にならなかったハンドルのグリップも、滑りやすい砂地では後部に重心があるせいで後輪が滑りやすく、すぐにスピンしてしまいます。また、流線型のフォルムは空気抵抗が少なくスピードこそ出やすいですが、車高が低いために僅かな段差に乗り上げるだけでも後輪が浮いて空転しています。こうなったらもう、リセットしないと抜け出せない。
ゲームならリセットで済みますが、現実にはレッカー車が必要です。車には適材適所があり、悪路には悪路の車があるということですね。
試しに、”走破性”が高いと言われるジープタイプの車でも同じ道を走らせてみましょう。

車高の高い車は底面に障害物が触れることがなく、スピードこそスポーツカーより遅くとも砂地の道でもスムーズに発進できます。サスペンション剛性の低い車体は衝撃を吸収しやすくタイヤの空転も起きにくいため、遅くとも着実に前へ前へと進む。中でももっとも”走破性”に貢献している要素は、やはり4WD(四輪駆動)でしょう。
動くタイヤのどれか一つでも路面に触れていれば、車は必ず前に進む力を生み出す。二輪駆動に比べて四輪駆動の走破性が高いことは、前輪だけでも崖を登る車の姿を見れば一目瞭然のことなのです。
“衝突安全性”を知るには……何が起きるかを自分の目で確かめてみよう
最後は”衝突安全性”についても考えてみましょう。”衝突安全性”は言わずもがな、車選びにおいてもっとも重要な性能の一つです。おそらくは皆さんも、ダミー人形を乗せた衝突実験の動画を見たことがあるでしょう。
これについては現実でも各種機関によって性能が数値化されており、日本の自動車安全性能評価(JNCAP) やアメリカの IIHSの衝突テストなどが知られています。実際の車選びの際には必ず現実に即したデータをご確認いただく必要がありますが、『BeamNG.drive』でも、簡易的に試せることはあります。
それは「車の”安全性”の違いが事故発生時にどのような結果の違いを生み出すか」です。
分かりやすい性能比較のため、今回は2台の対照的な車に頑張ってもらいましょう。1台は車体重量745kgの軽自動車、もう1台は車体重量2060kgを誇るアメリカンスタイルのピックアップトラックです。


その重量差は実に3倍。この2台がもしも正面衝突したら……結果は言わずもがな。
ピックアップトラックはバンパーが歪んだだけで済んだにもかかわらず、軽自動車は車体前面が完全にひしゃげてしまいました。衝突時の車の安全性には、車体重量が大きな影響を与えることがうかがえます。

しかしながら、車の安全性は損傷具合だけで決まるわけではありません。例えば独立行政法人自動車事故対策機構では、自動車の衝突安全性能評価について細かく項目を定めており、大きく分けて「乗員保護性能」、「歩行者保護性能」、「シートベルト着用警報」の3つの観点から評価を下しています(外部リンク)。
ようは車体が大きく壊れても、それによって歩行者やドライバーが保護されるなら安全性は高まるということ。今回の例で言えば、前面が派手に潰れたことで衝撃が吸収され、運転席に空間が確保されたとも言えるわけですね。

自動車の進化の歴史は、テクノロジーの進化の歴史。私たちが普段目にする現代の車のスペックは、物理シミュレーター上ではボタン一つでできるこれらの実験を、何人ものエンジニアが、何台もの車を使うことで実際に繰り返してきた結果の上に成り立っています。
中でも、あらゆる要素によって複合的に生み出される”安全性”は、車の各パーツの性能向上の結晶のような性能だと言えるでしょう。ですから最後は、そうした技術的進歩の差を一目で感じられるテストを行い、今回の検証を終えることとしましょう。


ご用意したのは、ゲーム中もっとも古い1933年生産のクラシックカーと、2020年生産の現代的な5ドアハッチバックの2台。いずれ劣らぬ良さを持つ名車たちですが、設計思想には一世紀の差があります。この2台を断崖絶壁から落すと、一体どうなるでしょうか。
高い山の頂上から落下し……。

岩が広がる山肌を転がり落ち……。
.gif?fm=webp)
山の麓まで辿り着いたときには……?


クラシックカーはフレームが折れ曲がって運転席が潰れてしまった一方、現代の車は車体がベコベコに凹みながらも運転席の空間を守り切るという結果となりました。
最後に

いかがだったでしょうか。『BeamNG.drive』は今回紹介したシミュレーターとしての遊び方以外にも、スペックを自由にカスタマイズできる本格的なレーシングシムとしても、車で風景を巡るドライブゲームなどとしても遊べる自由度の高い作品です。
本物の車で街に出るのはまだちょっと怖いけど、ちょっとづつで良いなら今すぐ車そのものには触れてみたい。さぁ、そんなペーパードライバーの貴方こそ、まずは『BeamNG.drive』というゲームを思う存分”試して”みてはいかがですか。









ぶっこわ……試そうか